オフィス設計を考える時間

多少、早いか遅いかの誤差が現れるだけのことです」。 私は無言で領いた。
Mさんの言っていることは、たしかにそのとおりだと思った。 思い上がっているわけではないけれど、人間は考えて行動をしている。
周囲に流されるタイプの私のような人間でさえ、やはり自分なりに考えて行動してきたのだ。 隣に座っているT子さんの顔を見ると、彼女も私の方へ視線を向ける。
「そのとおりですよ」と言いたそうな顔だった。 そうかもしれない。

そうだ、私は努力をした。 忘れていたのではない。
あれが努力だった、と今わかったのだ。 T子さんのために、私は、私なりに努力をしたのだ。
たが、窓がなく渡せなかった。 一所懸命に働いたし、できるだけ彼女が良い思いをするようにと、いつもいつも考えていた。
そうすることが、私の使命だと感じたからだし、そうする以外に、私が彼女にできることはなかったのである。 「見せたいものがあります」Mさんはゆっくりと立ち上がった。
「隣の部屋です」Mさんが扉を開けて、さきに入っていく。 私とT子さんも続いた。
やはり広い部屋で、窓がなく暗かった。 Mさんが壁際のスイッチで照明をつけるまでは、部屋の全体が見ずらい。
「素敵」T子さんが咳いた。 白っぽい間接照明がぼんやりと空間全体を照らし出し、博物館か美術館の一室のような雰囲気になった。
周囲に大きなガラスケースが並んでいて、そこが一際明るい。 ケースの中には、模型の建築物が並んでいた。

前面には壁がなく、室内が見えるように作られている。 近づいてよく見ると、人形が何人か部屋の中にいた。
顔は陶器製のようだが、服装は実物と同じように布で細かく作られている。 最初に覗いたミニチュアでは、人形の背丈が二十センチほどだった。
建物は二階建てで、高さが一メートルくらい。 おもちゃのような小さなものでは「凄いですね」私も感心する。
「これは、ドールハウスですね?」「まあ、私の趣味の一つでしてね、専門の職人に作らせたものです。 五年に一つくらいの割合で作っていたのですが、こんな数になってしまいました」。

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